【貯蓄4000万円以上】を保有する65歳以上世帯はどれほど?高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と回答
【貯蓄4000万円以上】を保有する65歳以上世帯はどれほど?高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と回答
暦の上では秋を迎えましたが、まだまだ厳しい残暑が続いています。
朝晩もエアコンが手放せず、家計を圧迫する光熱費に頭を抱える家庭も少なくないでしょう。支出が増える分、収入が増えればいいのですがそうとも限りません。
特に老後を迎えると、収入は年金に限定される世帯がほとんどとなるため、やりくりに頭を悩ませるものです。現役時代のうちにある程度の老後資金を貯めたいと思いつつ、なかなか長期的な貯蓄にまで手が回らないという人も多いのではないでしょうか。
実際にどれくらいの高齢者世帯が十分な貯蓄を保有しているのか、その実態はあまり知られていません。
この記事では、総務省の家計調査から「65歳以上の世帯の貯蓄事情」に注目します。貯蓄4000万円以上を保有する世帯の割合や、その平均値・中央値を見ていきましょう。
高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と感じている現代。経済的な不安を少しでも軽減できるよう、今のうちからできる対策を考えていきます。
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高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と回答
厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」という統計データによると、高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯)の半数以上が「生活が苦しい」と回答しています。
出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
高齢者世帯の生活意識を調査した結果
・大変苦しい→25.2%
・やや苦しい→30.6%
・普通→40.1%
・ややゆとりがある→3.6%
・大変ゆとりがある→0.6%
半数以上である55.8%が「大変苦しい」「やや苦しい」と回答しており、「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と回答した世帯はわずか4.2%となりました。
なお、「普通」と回答した世帯は40.1%となり、「せめてここを目指したい」と思う現役世代の方も多いのではないでしょうか。
生活意識に影響を与える要素としては、収入の多さや生活レベル、貯蓄の有無や世帯人数などさまざまなものが複雑に絡んでいると考えられます。
このうち、貯蓄額についてくわしく見ていきましょう。
【貯蓄4000万円以上】を保有する65歳以上世帯はどれほどいる?
現在、「貯蓄4000万円以上」を保有する65歳以上世帯はどれほどいるのでしょうか。
総務省統計局が公表する「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)貯蓄の状況」より、「世帯主が65歳以上」のデータを見てみましょう。
二人以上世帯のうち「世帯主が65歳以上のシニア世帯」貯蓄額の平均・中央値
世帯主が65歳以上の二人以上世帯では、平均貯蓄額が2509万円、中央値が1658万円となりました。金額だけを見ると高く感じるかもしれません。
このうち、貯蓄額4000万円以上の世帯は20.0%を占めています。参考までに、金額ごとの世帯割合も見ていきましょう。
【一覧】貯蓄額ごとの世帯割合
・100万円未満:8.1%
・100万円以上~200万円未満:3.6%
・200万円以上~300万円未満:3.1%
・300万円以上~400万円未満:3.6%
・400万円以上~500万円未満:3.3%
・500万円以上~600万円未満:3.3%
・600万円以上~700万円未満:2.9%
・700万円以上~800万円未満:2.8%
・800万円以上~900万円未満:3.3%
・900万円以上~1000万円未満:2.5%
・1000万円以上~1200万円未満:4.8%
・1200万円以上~1400万円未満:4.6%
・1400万円以上~1600万円未満:5.1%
・1600万円以上~1800万円未満:3.3%
・1800万円以上~2000万円未満:3.3%
・2000万円以上~2500万円未満:7.4%
・2500万円以上~3000万円未満:5.8%
・3000万円以上~4000万円未満:9.4%
・4000万円以上:20.0%
統計資料の特徴として、金額によってレンジが100万円や1000万円など幅があるため、単純に比較することができません。
ただし「4000万円以上:20.0%」は5世帯に1世帯を表しているため、多く感じる方もいるでしょう。
「いくらあれば十分か」は世帯によって異なりますが、目標金額を貯めた世帯は老後の不安が解消されているかもしれません。
もし目標金額まで貯められなかった場合、定年退職後も働くということが選択肢としてでてきます。
2025年4月からは、高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保が完全義務化されました。シニア層が働きやすい環境が整いつつあります。次章では、シニアの就業について確認していきましょう。
シニア層の就業率は上昇傾向に
内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、シニアの就業率は年々上昇しています。
年齢階級別就業者数及び就業率の推移
75歳以上はほぼ横ばいですが、65歳~69歳は前年比+1.6ポイントの53.6%、70歳~74歳は前年比+1.1ポイントの35.1%です。
また、「何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか」をたずねた質問に対し、最も多かったのが「65歳くらいまで」で23.7%。次いで「働けるうちはいつまでも」が22.4%となりました。
何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか(択一回答)
さらに現在収入のある仕事をしている方に絞ると、「働けるうちはいつまでも」と回答した方が33.5%となっています。
働く理由はさまざまですが、今後も就業率があがっていくことが予想されます。
最後に、高齢者世帯の生活意識に大きく関わる「年金受給額」に迫りましょう。
「厚生年金・国民年金」月額平均はいくらなのか
公的年金は国民年金と厚生年金という2階建て構造となっており、終身で受給できる貴重な収入源です。ただし、年金だけで暮らせる世帯はそう多くありません。
いまのシニア世代の方々は、年金を月どれくらい受給しているのでしょうか。
厚生年金の平均月額
厚生年金《平均月額の男女差・個人差に着目》
〈全体〉平均年金月額:14万6429円
・〈男性〉平均年金月額:16万6606円
・〈女性〉平均年金月額:10万7200円
※国民年金部分を含む
ただし、月額1万円未満~30万円以上と大きな個人差も見られます。ボリュームゾーンは「月額10万円以上~11万円未満」となりました。
では、国民年金のみを受給する場合はどうでしょうか。
国民年金の平均月額
国民年金《平均月額の男女差・個人差に着目》
〈全体〉平均年金月額:5万7584円
・〈男性〉平均年金月額:5万9965円
・〈女性〉平均年金月額:5万5777円
国民年金の受給額のボリュームゾーンは「月額6万円以上~7万円未満」です。
月額1万円未満~7万円以上と個人差もみられますが、保険料が全員一律である(年度ごとに見直しあり)ことから、厚生年金ほどの大きな差はありません。
まとめにかえて
今回は、現在のシニア世代の暮らしぶりを「貯蓄額・就業率・年金額」に関するデータから確認してきました。
公的年金だけで、老後充分足りるとは言い難いと感じられた方も多いのではないでしょうか。
年金だけで生活費をカバーできない場合、今まで貯めてきた預金や金融資産から補填することになります。
シニア層の就業率が上昇傾向にある中、労働収入で補填するという世帯も一定数いらっしゃいますが、健康面や体力面から働くことが難しくなる可能性も考慮しておく必要もでてくるでしょう。
現役時代から将来に向けてしっかり準備をしておくと、安心した老後が迎えられるでしょう。
参考資料
・総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)貯蓄の状況」
・内閣府「令和7年版高齢社会白書」
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」