モバイルバッテリーの事故が急増中! 意外なNG行為、買い替えの時期は?
最近増えているモバイルバッテリーが原因の事故、防ぐための適切な使い方は?
近年、モバイルバッテリーをめぐる火災や発煙などの事故が増加しています。
スマートフォンやタブレットの普及に伴い、外出時の“必需品”となったモバイルバッテリーですが、使い方や管理を誤ると、思わぬトラブルを招くこともあります。
そこで今回は、安全な使い方や買い替えの目安、処分方法について、エレコムの担当者に話を聞きました。
モバイルバッテリーの火災原因は? 発火を招く「リチウムイオン電池の劣化」
モバイルバッテリーの発火事故の要因として最も多いのは、「リチウムイオン電池の劣化によるもの」だといいます。
電車内でモバイルバッテリーから出火した事例での、モバイルバッテリーの焼損状況(出典:東京消防庁)
「モバイルバッテリーに使用されているリチウムイオン電池は、充放電を繰り返すと段々と劣化していきます。その結果、電池持ちが悪くなるだけでなく、膨張や発火のリスクも高まります」
リチウムイオン電池が膨張した様子(写真はスマートフォン内蔵のもの)
普通に使用していても劣化は進みますが、扱い方を間違えるとそのリスクは一気に高まるとのこと。日常的にやってしまいがちな“実は危ない使い方”もあるそうです。
衝撃を与えるのは避けて。「落下」より怖いのは「圧力」
モバイルバッテリーを取り出そうとしたら、手が滑って落としてしまった、なんてことはよくありますよね。
エレコムによれば、「落下試験などの耐久試験も行なうので、通常使用の範囲であれば落とした程度では問題ないと思います」とのこと。傷がついたりしたらショックですが、すぐに使用を中止する必要はなさそうです。
それよりも、実は危ないのは、ズボンの後ろポケットに入れてそのまま座ってしまうこと。「一瞬だけの落下の衝撃よりも、長時間かかる圧力の方が深刻なダメージになる」そうなんです。もしもポケットに入れていることを忘れて座ってしまった場合は、すぐに取り出すようにしましょう。
モバイルバッテリーをポケットに入れていることはついつい忘れてしまいがち。けれど、この状態で座るのは圧力がかかって危険です
また、衝撃によってもしも内部に不具合が起きても、外からは判断しにくいもの。使用・充電時に筐体が熱くなる、異臭がする、振ったら異音がするといった異常があれば、使うのは控えるべきでしょう。
モバイルバッテリーの寿命を縮める高温環境と充電習慣
真夏の高温は人間だけでなく、モバイルバッテリーにも負担をかけます。
「多くの製品は使用環境温度が5〜35℃程度、最高許容周囲温度が45℃程度に設定されています。直射日光に当たったり、金属製のテーブルに置くなどすると、それを超えてしまうことがあるので注意してください」
ほかにも、「モバイルバッテリーを鞄の中に入れたまま、手に持ったスマートフォンを充電する」というのもありがち。ですが、「鞄の中は通気性が悪く、熱がこもりやすいので避けるべき」だそう。同じように、布団やクッションの上に置いて充電するのも、熱を持ちやすくなるため止めておきましょう。
モバイルバッテリーが熱を持ってしまうような環境での使用はなるべく避けたほうがいいでしょう
ちなみに、よく言われる「充電しっぱなしはよくない」というのは事実です。フル充電の状態で通電を続けると、繰り返し充放電されてバッテリーが劣化してしまいます。また、就寝中の充電も、異常が起きた際に気づきにくくなるため控えましょう。
買い替え時期は何年? 寿命の目安と長持ちさせるコツ
では、特に問題のある使い方をしていなかったとして、どのくらいでモバイルバッテリーは買い替えるべきなのでしょうか。
「一般的に、リチウムイオン電池の充電サイクルは500回ほどとされています。つまり、毎日フル充電して使っていれば、およそ1年半ほどで寿命を迎えることになります。それほど頻繁に使わない人でも、2〜3年といったところでしょうか」
ただし、充電サイクルに余裕があっても、買い替えのタイミングが早まることがあります。リチウムイオン電池は使用しない間も自然に自己放電します。そして電池残量が0%の状態で放置しておくと、過放電が起きて劣化が進んでしまうのです。
そのため、たとえ新品のモバイルバッテリーでも、あまりにも長い間使わず放置しておくと、すでに劣化している可能性があるそう。もし、しばらくモバイルバッテリーを使う機会がないなら、70%程度の充電状態で保管するようにしましょう。
最近はLEDや液晶ディスプレイで、電池残量や充電回数、交換時期を表示する製品もあります。膨張などの目に見える異常だけでなく、こうした小さな“買い替えサイン”も見逃さないようにしましょう。
LEDやディスプレイで残量を確認できる製品の例
モバイルバッテリーの正しい処分・回収方法と注意点
実際に異常が確認できたら、どう対処すべきなのでしょうか。
まずは、地方自治体に処理方法を問い合わせるようにしましょう。また、膨張や破損といった不具合がない場合は、家電量販店などの回収BOXを利用することもできます。
「処分時には電池残量0%の状態にしておくと、発火の危険性が低くなります。すでに異常が起きて使用できない場合は、鍋のような頑丈な容器に入れて保管し、地方自治体に連絡するようにしてください」
また、モバイルバッテリー以外にも、完全ワイヤレスイヤホンやハンディファンなどリチウムイオン電池を内蔵した製品は多くあります。これらはモバイルバッテリーほど捨て方が確立していないこともあるため、やはり地方自治体に処分方法について確認するのがよいでしょう。
完全ワイヤレスイヤホンやハンディファンといった製品も、リチウムイオン電池を内蔵していることが多いため、モバイルバッテリーと同じように取り扱いには注意が必要です
もしも地方自治体や回収BOXで受け付けてもらえない場合は、専門業者に処分を依頼しないといけなくなるかもしれません。エレコムでは実店舗「エレコムデザインショップ」でモバイルバッテリーの無償回収を行なっていて、自社製品以外でもJBRC加盟企業製のものであれば回収してくれます。ほかにも、Ankerなど回収に対応するメーカーがあるので、チェックしてみてください。
モデルによっては、安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン電池や、ナトリウムイオン電池を採用していることも。判別がつくようであれば、あわせて報告するといいかもしれません
リコール情報も要確認
ここまで紹介してきたように、モバイルバッテリーの取り扱いには注意が必要です。一方で、正しく扱えていても、製品が「リコール対象品」であることに気づかず使っていて、トラブルが起きてしまったケースもあります。
では自分の使っているモデルがリコール対象品なのか、どうすればわかるのでしょうか。
「エレコムでは、Amazonや楽天で購入されたモデルがリコール対象品となった場合、メーカーから案内を流します。店頭で購入されるケースでは案内ができませんが、公式サイトに必ず掲載するようにしています」
ただ、すべてのメーカーが案内を出してくれるとは限らないため、確実なのはユーザーから調べにいくこと。メーカーの公式サイトでは、リリース情報に掲載されることが多いですが、発表から時間が経っていると見つけるのが大変です。
消費者庁や経済産業省のウェブサイトでは、最新のリコール情報がまとめられています。モバイルバッテリー以外にも、意外な製品が対象になっていることもあるため、一度手持ちの機器を調べてみることをおすすめします。
消費者庁のリコール情報
経済産業省のリコール情報
モバイルバッテリーの安全チェックを今日から始めよう
モバイルバッテリーは、正しく使えば決して危険ではありません。しかし、内部の電池は消耗品であり、劣化は避けられません。
「何かおかしい」と感じたら、念のために使用を控え、適切に処分することが大切です。
安全に使い続けるためにも、モバイルバッテリーの状態やリコール情報をチェックしてみてはいかがでしょうか。
モバイルバッテリーを正しく使用して、事故のリスクを減らしましょう